イエメンのフーシ派はどう勢力を広げたのか、サアダの反乱から政府との全面衝突まで

2026.09.20

イエメンのフーシ派はどう勢力を広げたのか、サアダの反乱から政府との全面衝突まで

フーシ派とは(成り立ち)

フーシ派は、イエメン北西部のサアダ県を拠点とするザイド派の運動である。サウジアラビアの影響力の拡大や、国家資金で支援されたサラフィー主義の説教師の進出に対する反発として、フーシ派運動が生まれた。フーシ家はサアダ県の大きな氏族であり、ザイド派はイエメン人口の約35%を占める。

創設者はフセイン・バドルッディーン・アル=フーシで、彼はザイド派の聖職者で元国会議員であった。彼はサーレハ大統領の米国・イスラエルに対する接近を批判し、2000年の資金削減後に反政府デモを動員した。2004年6月、サーレハ政権はフーシ派に対する取り締まりを強め、フセインに逮捕状を出した。政府の逮捕試みは武装蜂起を引き起こし、フセインは同年に治安部隊に殺害された。

以降、フーシ派は指導者の座をフセインの弟のアブドゥルマリク・アル=フーシに引き継がせ、サアダ戦争と呼ばれる6回の戦闘が政府軍との間で続いた。運動の紋章には「神は偉大なり、アメリカに死を、イスラエルに死を、ユダヤ人に呪いを、イスラムに勝利を」とのスローガンが掲げられている。この反米・反イスラエルの主張は、一部アナリストによれば主に象徴的なものであるとされる。

政府との対立と内戦の経緯

2011年にサーレハ大統領が辞任した後、イエメン国内の権力の空白が生じ、フーシ派は2014年9月に首都サヌアを制圧した。国連の仲介による撤退にいったん同意したものの、2015年1月の新憲法案を拒否し、大統領府を占拠した。この動きに対し、同年3月にサウジアラビアがハーディ大統領の要請を受け、フーシ派の拠点に対する空爆を開始した。

国連による和平の試みは失敗を繰り返し、紛争は続いた。フーシ派は元大統領アリー・アブドゥッラー・サーレハの勢力と同盟していたが、サーレハがサウジ側への和解を示したため同盟は崩壊した。2017年12月にサーレハはフーシ派に殺害され、フーシ派は彼を「反逆」で殺したと主張した。

2022年4月には国連の仲介により2か月間の全国的な停戦が成立し、停戦は6月まで延長された。また、ハーディ暫定大統領は権限を8人から成る大統領指導評議会に移譲した。2025年12月にはUAE支援の南部暫定評議会が産油地域を掌握し、2026年1月にPLC側が奪還した。

2026年1月の時点で、フーシ派はサヌアを含む北西部とホデイダなどの紅海の港を支配している一方で、PLCはアデンを中心にフーシ派が支配する地域以外の大半を支配している。

フーシ派の目的と外部勢力との関係

フーシ派の目的として、彼らは国の主権を維持し、外部勢力の影響を排除する意図があるとされる。米国とサウジアラビアはフーシ派に対し、イランからの武器供与の物証を示しているが、イランは直接の軍事支援を否定している。2017年11月の国連報告書によれば、サウジに向けて発射された弾道ミサイルがイラン製であると確認された。

2023年11月19日には、フーシ派が紅海南部で貨物船を拿捕し、イスラエルとの関係を理由に乗組員を人質にした。2025年3月には米国務省がフーシ派を外国テロ組織に指定し、紅海での商船及び軍艦への攻撃を理由に挙げた。2026年7月にはサウジの空爆がサヌア空港に及び、フーシ派はその後サウジに対する封鎖を宣言し、紅海で船舶への攻撃を再開した。

米シンクタンクCritical Threatsによれば、フーシ派はサウジの石油施設への攻撃で軍事行動と反フーシ派勢力への支援を終わらせるよう迫る狙いがあるとされている。また、フーシ派は国際的な海運を標的にする意図はないと主張し、他国がサウジの攻勢に加わるのを防ごうとしているとの分析がされている。

2026年9月の情勢

2026年9月3日、フーシ派は政府とサウジとの停戦の終了を宣言し、PLCに対する攻勢を開始した。戦闘はタイズ県で始まり、PLC側はアル=ジャウフ県とアル=バイダ県で反撃に出た。ホデイダ県やモカなどの沿岸部でも戦闘が発生し、制圧に関する報告には食い違いがあった。

同日の戦闘では少なくとも129人が死亡したとの報告があり、サウジの空爆が後にアル=ハズムの刑務所を襲撃した際には23人が死亡したとされる。Critical Threatsの分析では、フーシ派が紅海沿岸の政府側の主要港を制圧し、紅海沿岸で唯一の事実上の政治的権力となったとされる。

9月10日にはサウジのムハンマド皇太子が米国のトランプ大統領に対し、米軍の直接攻撃の承認を求めたが、トランプ大統領はこの要求を断った。国際移住機関によると、9月15日時点で新たに避難した人は約9万3864人に達し、民間人への被害が増加していることが指摘された。

人道状況

国連の2026年計画によれば、全人口の約3分の2にあたる2230万人が人道支援を必要としている。1830万人が深刻な食料不安に直面しており、5歳未満の220万人以上が急性栄養不良であると言われている。フーシ派の支配地域においては、国連の支援活動が維持困難な状況にあるとされている。