なぜ日本にミシンの世界的メーカーが3社もあるのか
2026.07.27
日本の3大ミシンメーカー
日本には長い歴史を持つ3つの大手ミシンメーカー、ブラザー工業、JUKI、ジャノメが存在します。これらの企業はそれぞれ異なる強みを持っており、家庭用ミシンや工業用ミシンの分野で世界的に高いシェアを誇っています。この記事では、各社の成り立ちや特色について解説します。
株式会社ジャノメ
株式会社ジャノメは、1921年に小瀬與作・龜松茂・飛松謹一の3人によって設立されました。当初は「パインミシン裁縫機械製作所」という名称で、東京都滝野川でスタートしました。同年には国産化第一号とされる小型手廻し式ミシン「パイン500種53型」を完成させ、日本初の国産ミシンメーカーとしての地位を確立しました。
ジャノメは、世界で最初に家庭用刺繍ミシン「グラフイカ」を開発・販売したことでも知られています。特に刺繍機能が充実しており、家庭用ミシン市場において独自の地位を築いています。2021年10月には、社名を「蛇の目ミシン工業株式会社」から「株式会社ジャノメ」に変更し、ブランドの再活性化を図りました。
ジャノメの家庭用ミシン
ジャノメは家庭用ミシンに特化した製品ラインを持ち、特に初心者向けや趣味で裁縫を楽しむ人々に支持されています。ミシンの機能や操作性がシンプルで、ユーザーフレンドリーなデザインが特徴です。特に刺繍ミシンに関しては、そのクオリティの高さが評価されており、多くの家庭で利用されています。
ブラザー工業株式会社
ブラザー工業株式会社は、1908年に安井兼吉が名古屋で創業した「安井ミシン商会」にその起源を持ちます。その後、1925年に安井正義が事業を継承し、「安井ミシン兄弟商会」へと改称しました。1928年には麦わら帽子製造用のミシンを開発し、商標を「BROTHER」と名付けました。続いて1932年には国産家庭用本縫いミシンの第一号機が完成し、1934年に日本ミシン製造株式会社が設立されました。
ブラザー工業は、ミシンだけでなく、洗濯機やオートバイ、タイプライター、ファックス、プリンターなど、多岐にわたる事業を展開しています。家庭用ミシンのシェアは60%を占め、工業用ミシンでも高いシェアを誇ります。特に、家庭用刺繍ミシンの機能が充実しており、刺繍ソフトの品揃えは業界随一とされています。2021年のグループ売上高は6411億円、ミシン事業の売上高は712億円です。
ブラザーの家庭用ミシン
ブラザーのミシンは、家庭用に特化した機能性とデザイン性が魅力です。特に刺繍ミシンは高機能で、ユーザーが手軽にプロレベルの刺繍を楽しめるように設計されています。また、過去の技術を活かしつつ最新のテクノロジーを積極的に取り入れる姿勢が強みです。
JUKI株式会社
JUKI株式会社の設立は1938年に遡り、当初は「東京重機製造工業組合」として機関銃や小銃などの軍需製品を製造していました。1943年に株式会社化し、名称を「東京重機工業株式会社」に変更、戦後にはミシン製造へと方向転換を果たしました。その後、1988年には社名を「JUKI」と改め、事業のブランドを確立しました。
JUKIは、工業用ミシンで世界シェア30%を占めており、業界でのリーダーシップを持っています。本社は東京都多摩市にあり、近年は家庭用ミシンの強化も進めています。家庭用ミシンの売上は2018年には47億円、2022年までには104億円を見込んでいるとされています。
JUKIの工業用ミシン
JUKIは工業用ミシンの製造に特化しており、特にアパレル業界などで使用される機器に強みを持っています。工業用ミシンにおいては、精度や耐久性、高出力であることが求められるため、JUKIはこれらのニーズに応える製品を提供しています。シェアの高い理由は、業務用・業界用ミシンの質の高さと実績にあります。
日本に3社のミシンメーカーが存在する理由
日本にはこれら3社のミシンメーカーが存在する背景には、各社の創業当初からの多様な経緯と、それぞれの市場におけるニーズの変化があります。ジャノメは国産初のミシンメーカーとしてのブランド力と技術力を持ち、家庭での利用に重きを置いています。ブラザーは名称にも表れているように兄弟のように協力しつつ、製造したミシンを多種多様な用途に展開しており、家電としての位置付けも確立しています。JUKIは、戦時中からの技術の移行を背景に、工業用ミシンに特化したことで大きなシェアを確立しました。
家庭用ミシン市場はジャノメとブラザーの二強が占め、特に刺繍ミシンなどのニーズに応えますが、JUKIはアパレル業界を主力とし、異なるニーズを持つため、明確な棲み分けが行われています。これにより、各社は独自の戦略を持ちつつ、競争しながら発展してきたのです。
そのため、日本にはミシンメーカーが3社も存在し、それぞれの得意分野で強みを生かしながら国際市場で競争しています。このような状況は、国内外からの高い評価と信頼を得ており、今後もさらなる成長が期待される分野といえます。