原油輸出ほぼゼロに、米海上封鎖が断つ革命防衛隊の資金源と今後の展望

2026.10.03

原油輸出ほぼゼロに、米海上封鎖が断つ革命防衛隊の資金源と今後の展望

封鎖に至る経緯

2026年2月28日、米国とイスラエルが合同でイランへの空爆を開始し、戦争が勃発しました。この動きに対抗する形で、イランは3月4日にホルムズ海峡の閉鎖を決定しました。この措置は、海上交通に大きな影響を及ぼし、国際的な緊張を高める結果となりました。

その後、パキスタンで行われた和平交渉(イスラマバード協議)は4月11〜12日に決裂しました。この失敗を受けて、米国は4月13日よりイラン沿岸全体やペルシャ湾、オマーン湾のイラン港湾に対する海上封鎖を開始しました。

封鎖開始後、米軍はタンカーの臨検や進路変更を実施しました。その結果、5月22日までには94隻、9月12日までには100隻以上のタンカーが帰還を余儀なくされました。これに対してイラン政府は封鎖を「海賊行為」「戦争行為」と非難しました。

6月14日、トランプ大統領とイランのペゼシュキアン大統領は終戦合意を発表し、6月17日には覚書(イスラマバード覚書)に署名しました。その翌日、米中央軍は封鎖解除を宣言しました。しかし、革命防衛隊が6月25日・27日、7月6日・7日に商船への攻撃を再開したため、米国は7月7日に一時的な許可を取り消し、7月14日に再び封鎖を実施しました。

革命防衛隊が石油輸出に依存してきた構造

2024年末の報道によると、イランの石油輸出のほぼ半分を革命防衛隊とその関連組織が支配しています。この比率は、3年前の約20%から50%近くに拡大しています。革命防衛隊は、石油の物流や販売を行うフロント企業を使い、影の船団を運用して多様な形で石油事業に関与しています。

主な販売先は中国であり、フロント企業は中国、UAE、香港、シンガポール、マレーシアなどに登記されています。また、イランの2025〜26年度予算は日量185万バレルの石油輸出を前提としており、そのうち3分の1に相当する124億ドルを軍事や特別軍事プロジェクトに振り分けています。これは前年の3倍にあたります。

石油収入はヒズボラなどの中東各地の代理勢力に対する活動資金としても重要な役割を果たしています。革命防衛隊は、石油を通じて得られた資金を利用して、地域の紛争に資金を供給する構造が確立されています。

封鎖による輸出の激減

イランの石油輸出は、封鎖が始まった2026年4月以降急激に減少しました。2月には日量210万バレル強あった石油輸出が、5月にはほぼゼロにまで落ち込みました。具体的には、5月の輸出量は200万バレル余りで、4月の2970万バレルから93%減少しています。

米国防総省は、4月13日から5月1日までの間にイランが48億ドルの石油収入を失ったと推計しています。また、英オックスフォード・エコノミクスの試算では、封鎖によってイランの輸出収入の70%が断たれる可能性が指摘されています。

6月には覚書と封鎖解除により日量175万バレルまで回復しましたが、7月の封鎖再開後には再び減少しました。特に8月には、オマーン湾を出たのはLPGを積んだタンカー3隻のみであり、輸出は開戦前の月平均約5500万バレルから著しく減少しました。

9月7日には、米ウォール・ストリート・ジャーナルが新規の石油輸出が完全に停止していると報じました。イランは7月以前に積み出した洋上在庫に頼らざるを得ない状況です。データ会社Kplerによると、主要輸出拠点であるカーグ島では9月中に積み込みがゼロでした。

革命防衛隊の石油ネットワークへの制裁

米財務省は2026年5月11日、革命防衛隊による中国向け石油販売・輸送に関与した12の個人・団体を制裁対象として指定しました。革命防衛隊の石油本部長や財務責任者、商務責任者、さらには香港やUAEの企業が含まれています。財務省は、革命防衛隊が規制の緩い国・地域のフロント企業を利用して収益を政権に流していると指摘しました。

また、8月24日にはベッセント財務長官が「経済のDデイ」と称し、オペレーション・エコノミック・アウトキャストを発表しました。これにより、イラン産石油を運ぶための仲介業者や企業、影の船団に関連する60以上の企業や個人が制裁対象となりました。

この施策によってデジタル資産、技術、金、航空、海運の5分野でイランを国際経済から切り離すことを目的としています。特に、中国などの第三国に対してイラン産原油の購入停止を迫ることが狙いとなっています。

革命防衛隊と代理勢力への影響

イランは石油収入の急減に加え、通貨リアルの暴落やインフレ(9月時点で70%)、金融規制の強化にも直面しています。これにより、ヒズボラへの資金供給能力が制約される状況になっています。

それでも、2025年初め以降、ヒズボラは革命防衛隊から10億ドルを超える資金を得たとされており、革命防衛隊と関連する暗号資産ウォレットでの送金は総額30億ドルを超えました。ヒズボラはレバノン国内の両替商ネットワークを通じて、銀行送金を使わずに資金を受け取る仕組みを持っています。

ヒズボラはレバノン国内の6万人以上の戦闘員や職員に対して現金給与を支給する必要があり、そのための資金需要は依然として大きい状態です。

今後の展望

イランは10月1日にホルムズ海峡の再開と封鎖解除後に地域紛争や核問題を協議する7日間の案を提示しました。しかし、トランプ大統領はこれを「受け入れられない」と拒否し、11月3日の中間選挙後に攻撃を再開する可能性も示唆しています。トランプ氏は、イランが協議を求める理由を「資金が入ってこない」からだと述べています。

10月2日時点でブレント原油は1バレル100ドル前後で取引されており、革命防衛隊はホルムズ海峡で米国の無人潜水機を捕獲したと主張しており、海峡をめぐる緊張は依然として続いています。

さらなる懸念として、洋上在庫が尽きれば、中国向けの販売という革命防衛隊の主要な資金源はさらに細る可能性が高いです。しかし、影の船団やフロント企業、暗号資産、両替商といった迂回ルートが残っているため、制裁がそれらをどこまで効果的に阻止できるかが今後の焦点となります。