雨雲レーダーはなぜ数分先の雨まで見通せるのか

2026.07.28

雨雲レーダーはなぜ数分先の雨まで見通せるのか

雨雲レーダーの仕組みと性能

雨雲レーダーは、降水を検知するための高度な気象観測装置である。主に、気象レーダーと呼ばれる機器が用いられ、電波を細いビーム状にして発射し、雨粒や他の降水粒子に当たった際に跳ね返ってくる反射波(エコー)を受信する仕組みで動作する。この反射波の受信にかかる時間差から降水までの距離が判定され、同時に反射波の強度を測ることで降水の強さを推定することができる。

ドップラーレーダーの機能

ドップラーレーダーは、反射波の周波数における微細なずれを利用して、雨粒がレーダーに近づく速度や遠ざかる速度を把握する。この現象はドップラー効果と呼ばれ、風の動きを観測することができるため、降水の発生だけでなく、風の状態も同時に分析できる点が特徴である。

日本における気象レーダーの配置

気象庁が運営する気象レーダーは、全国に20か所設置されており、ほぼ全域をカバーしている。この気象レーダーの性能は、近年、送受信される電波の偏波の方向を水平・垂直の2方向に分けた二重偏波化技術を取り入れることで進化している。これにより、雨粒の形状を識別し、雨、雪、ひょうなどの異なる降水形態の判別精度が向上している。

XバンドMPレーダーとCバンドレーダー

国土交通省が運用するXバンドMPレーダー(通称XRAIN)は、より波長の短い電波を使用するため、解像度が高いが、強い雨の中では電波が減衰してしまい、その奥側の観測が困難になることがある。このレーダーの観測範囲は半径80kmであり、定量観測は60kmまで行える。一方、気象庁が管理するCバンドレーダーは、波長が長く電波の減衰が少ないため、半径200~300kmまで観測が可能である。定量観測は120kmまで可能であり、XバンドとCバンドは互いの特性を生かして全国をカバーしている。

高解像度降水ナウキャストの実施

気象庁の「高解像度降水ナウキャスト」は、これらの気象レーダーやXバンドMPレーダーの観測データに加え、全国約1万か所に設置された雨量計、ウィンドプロファイラ、高層観測(ラジオゾンデ)のデータも組み合わせて解析している。1分ごとに更新されるこのシステムは、30分先の降水分布を250m四方という非常に細かなメッシュで予測する。250mメッシュは従来の解析雨量の1kmメッシュに比べ、16倍の細かさを持ち、地形による降水の変化を捉える能力が向上している。

なお、35分から60分先の予測は1kmメッシュに切り替わり、より大まかな傾向を示すことになる。60分先になると、予測の精度は徐々に低下するため、大まかな目安として扱うことが推奨される。

新技術としてのフェーズドアレイ気象レーダー

従来型の気象レーダーは、パラボラアンテナを機械的に回転・上下させて観測を行っていた。こうした手法では、上空の立体的な様子を完全に把握するには数分の時間が必要だった。しかし、情報通信研究機構(NICT)と埼玉大学によって開発された「フェーズドアレイ気象レーダー」は、128個の素子からなるスロットアレイアンテナを使用し、デジタルビームフォーミング(DBF)技術によって、アンテナを物理的に動かさずに電子的にビームの向きを変更することができる。これにより、半径15~60km、高度14kmまでの範囲を10~30秒ごとに立体的に観測可能となった。

マルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダーの導入

2017年にNICTが発表した「マルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダー(MP-PAWR)」は、世界初の実用型であり、水平と垂直の偏波を同時に送受信する二重偏波観測を取り入れることに成功した。このレーダーは約30秒で3次元観測を完了し、発達中の積乱雲を的確に捉える能力を持ち、局地的大雨や竜巻の発生の可能性を20〜30分前に高精度で予測することができる。

急激な気象変化の把握と予測

これらの先端技術によって、突発的に発生するゲリラ豪雨や竜巻など、従来のレーダーでは捉えにくかった急激な気象変化の把握と予測が実現可能となっている。特に、局地的な天候の変化に対して、リアルタイムで迅速にデータを解析し、予測を行う能力が向上している。

今後も、気象レーダー技術の進化が続くことで、より精密な気象予測が可能となり、災害対策や日常生活に役立てられることが期待されている。