ボールベアリングはなぜ足りないのか、EV・ロボット需要と技術の核心
2026.08.07
ボールベアリングの市場規模と成長予測
ボールベアリング市場は、急速に拡大している。調査会社Research and Marketsによると、世界のボールベアリング市場規模は2026年には約368億ドルに達し、2034年には約600億ドルに成長するとの予測がある。この成長率は年平均6.3%に及ぶ。
全体の軸受市場を見ても、2025年には506億ドル規模、2034年には1240.7億ドルに達する見込みで、年平均成長率は10.9%に達するとされている。
市場需要の牽引要因
ボールベアリングの需要を引き上げている要素として、ロボット・自動化分野の拡大、電気自動車(EV)の高回転駆動軸(eアクスル)向けの軸受、産業用IoTで使用されるMEMSセンサーの統合がある。
これらの技術革新と新たな産業の登場は、ボールベアリングの需要を増加させ、さらなる市場拡大に寄与している。
供給側の課題と対応
ボールベアリングの供給側ではいくつかの課題に直面している。主な問題点として、原材料となる軸受鋼の価格変動や関税の影響が挙げられる。特に、AISI 52100や日本のSUJ2と呼ばれる軸受鋼の価格が変動することで、製造コストに影響を与える。
一方で、航空宇宙分野の整備・補修(MRO)需要やeアクスルの需要は、高精度軸受メーカーの採算を支える要素となっている。これにより、安定した成長が期待される。
地域別の市場動向
ボールベアリング市場において、アジア太平洋地域が圧倒的なシェアを持っており、2025年時点で世界シェアは45.5%に達すると見込まれている。これに伴い、日本の大手軸受メーカーも海外展開を進めている。
日本の主要メーカーの業績
日本の軸受大手3社、ジェイテクト、日本精工(NSK)、NTNは、2026年3月期に業績を上方修正した。ジェイテクトの売上高は1兆9249億円、事業利益756億円となっている。だが、欧米での構造改革に伴う一時費用が影響し、営業利益は248億円(前期比35.4%減)、当期利益は119億円(前期比12.7%減)となった。
NTNの2026年3月期通期業績見通しは、売上高8050億円、営業利益260億円である。原材料費の上昇分を販売価格へ転嫁する動きが浸透しており、航空宇宙(防衛・ヘリコプター向け)分野が好調である。一方、風力発電向けは業績のV字回復が見込まれている。
経営統合の動き
2026年5月には、日本精工(NSK)とNTNが共同持株会社設立による経営統合に基本合意した。統合の目標時期は2027年10月であり、この統合が実現すれば、スウェーデンのSKF、ドイツのシェフラーに匹敵する規模に達する。
この動きは、台頭する中国メーカーへの危機感が背景にある。両社はヒューマノイドロボットや協働ロボットなど「フィジカルAI」向けの製品開発を成長分野として位置付けている。
ボールベアリングの技術的コア
ボールベアリングの性能を支える技術の核心は、材料と精度にある。軌道輪(内輪・外輪)や転動体(玉・ころ)には、JIS G4805で規定される高炭素クロム軸受鋼SUJ2が広く使用されている。この材料は、炭素を0.95〜1.10%、クロムを1.30〜1.60%含む。
球状化焼なまし状態の硬さはHBW201以下だが、焼入れ・焼戻し処理を施すとHRC57〜64程度に硬度が上がり、耐摩耗性と転がり疲れ強さが得られる。
精度等級と加工技術
ボールベアリングの精度等級には、米国のベアリング製造者協会(ABEC)が定める規格がある。この規格はJIS等級と対応しており、JIS0級はABEC1(低精度)、JIS2級はABEC9(最高精度)に相当する。等級が上がるほど、転動体の真円度や寸法精度への要求が厳しくなる。
この精度を実現するためには、最終工程の研削加工が重要である。ここでミクロン単位の真円度や面粗さが作り込まれ、ボールベアリングの回転精度と寿命に大きな影響を与える。
今後の展望
ボールベアリング市場は、技術革新と需要の多様化により一層の成長が期待される。一方で、供給側の課題や国際競争も依然として克服すべき問題である。今後の市場動向とともに、精度と材料技術の進展がボールベアリングの未来を左右する重要な要素となるだろう。