ブラック・ブロックはなぜ街を壊すのか、西ドイツ発祥の戦術と各地の暴動・裁判

2026.10.18

ブラック・ブロックはなぜ街を壊すのか、西ドイツ発祥の戦術と各地の暴動・裁判

ブラック・ブロックとは

ブラック・ブロックは特定の団体名ではなく、デモの中で参加者が黒い服やマスク、フードで身元を隠し、集団で行動する戦術を指す。揃いの黒い服装には、警察に対抗しやすく、個人の特定を逃れるという実用上の目的があった。この呼び名は、西ドイツのメディアが彼らを「der schwarze Block(黒いブロック)」と呼んだことに由来する。

西ドイツで生まれた戦術

この戦術は、1980年前後の西ドイツで生まれた。反原発運動の活動家やスクウォッターたちに対する警察の実力行使が強まり、もともとは平和主義だった活動家の一部が、より戦闘的な手法へ移行したとされる。アウトノーメ(自律派)と呼ばれた左派の若者たちが担い手となり、西ドイツの都市部には職を持たない若者たちが多く、空きビルの占拠が住まいを確保する手段の一つであった。

シアトルWTO:北米への上陸

1990年代、反グローバリゼーション運動の中で、ブラック・ブロックの戦術は北米に広がった。1999年11月30日、シアトルで開催された世界貿易機関(WTO)閣僚会議への抗議デモにおいて、数百人のアナキストが多くの店舗を狙って破壊活動を行った。シアトル・タイムズの記録によると、約200人がハンマーで窓を割り、数店舗が損害を受け、同日、ポール・シェル市長は非常事態を宣言し、夜間外出禁止令を出した。

11月30日の逮捕者は68人であり、翌日の12月1日には500人を超える逮捕者が出た。この多くは窓ガラスの破壊ではなく、外出禁止令や抗議禁止区域への違反によるものだった。市は数百万ドルの被害を被り、抗議参加者側からは公民権侵害の訴訟も起こされた。事件の後に、ブラック・ブロックに加わった「ACME Collective」は自らの行動を説明した声明「N30 Black Bloc Communiqué」を発表した。

ジェノバG8:死者と警察の暴力

2001年7月、イタリアのジェノバで開催されたG8サミットへの抗議デモでは、ブラック・ブロックが警察と衝突した。特に7月20日には、デモ参加者の23歳のカルロ・ジュリアーニが憲兵によって射殺された。射殺したマリオ・プラカニカは正当防衛を主張し無罪となり、その後も裁判所がイタリアの条約違反はないと判断した。

人権団体ステートウォッチによると、負傷者は482人(抗議参加者355人、報道関係者19人、警察官108人)にのぼり、逮捕者は280人とされている。警察は急襲にて約82人が負傷し、61人が重傷を負った事例もありますが、ここでは数十人への暴行が拷問と認定される事態も起こった。これにより、この事件はブラック・ブロックの破壊行為を理由とした取り締まりが無関係の参加者にまで広がった典型的な例の一つとして今も引用されている。

J20:集団起訴の行方

2017年1月20日、トランプ大統領の就任式当日にワシントンで発生した抗議デモの中で、集団的な破壊行為が行われた。この日の逮捕者は230人を超え、多くは重罪の暴動罪で起訴された。連邦検察は、この日の暴動により10万ドル以上の損害が発生したと主張した。

最初の裁判では被告6人全員が無罪となり、さらに129人の起訴が取り下げられた。2018年には4人の裁判が行われ、大半の罪状について無罪の評決が下された。検察は保守系団体から編集済みの映像を入手していたが、証拠の開示が不十分であったと裁判官によって認定された。この事件は、デモの中で誰が破壊行為を行ったかを個々に特定することの難しさを示した。

ハンブルクG20:燃えたシャンツェン地区

2017年7月6日、ハンブルクで開催されたG20サミットに伴うデモ「Welcome to Hell」が、最も深刻な衝突を引き起こした。ブラック・ブロックの集団はシャンツェン地区で公共物に火をつけ、警察に火炎瓶や石を投げつけ、その中でスーパーマーケットや小さな店舗の略奪も行われた。この衝突で213人の警察官が負傷し、63人が身柄を拘束された。

最初の裁判で21歳のオランダ人男性に対し、検察の求刑を上回る禁錮2年7カ月の判決が下された。当時のハンブルク市長は厳罰を求めていた一方で、証拠が不十分であるとの批判も存在した。さらに2025年には、当デモへの参加が法的根拠として用いられる事例が発生するなど、長期的な影響も残している。

パリ:メーデーと黄色いベスト

2018年5月1日のパリのメーデーにおいて、黒ずくめの参加者たちがマクドナルドを燃やし、商店のショーウィンドーを割った。警察は1500人を配置し、当初209人が拘束されたが、その後109人に訂正された。このデモは、過去のデモの影響を反映して暴力的な結果を招いた。

2019年3月16日には、「黄色いベスト」運動の一環として行われたデモで、シャンゼリゼ通りの高級ブラッスリーが襲われ、いくつかの店舗が破壊された。デモ参加者の中には暴力的な行動を取る者も存在し、このデモはジャンルを超えた抗議の象徴となった。

事件が残したもの

ブラック・ブロックは、匿名の集団行動の形態を取り、個々の行動の責任が特定しづらい側面を持つ。これは、活動の中での暴力行為が過剰な取り締まりを招く可能性も示唆している。警察や当局の行動もまた、無関係な者に対して不必要な暴力を振るう原因となり、社会における抗議活動の行方を複雑化させている。このような事例は、暴力とそれに対する社会の反応がいかに相互に作用するかを考えさせるものとなっている。