停戦から1年、ハマスの立ち位置と組織の立て直しを阻む3つの壁

2026.10.15

停戦から1年、ハマスの立ち位置と組織の立て直しを阻む3つの壁

ハマスとは

ハマスは1987年、第1次インティファーダの最中にムスリム同胞団系の組織として発足した。2006年のパレスチナ立法評議会選挙で勝利し、2007年にファタハとの衝突を経てガザ地区を武力で掌握した。その結果、ヨルダン川西岸はファタハ主導のパレスチナ自治政府が統治し、ガザはハマスが統治する分裂状態が続いている。

2023年10月7日、イスラエルによる攻撃が始まり、ハマスは指導者を相次いで失った。特に2024年7月に政治局長イスマイル・ハニヤがテヘランで、同年10月には後継のヤヒヤ・シンワルがガザで殺害され、ハマスの指導体制に大きな影響を及ぼした。戦争開始から3年でパレスチナ側の死者は7万4,000人を超えている。

停戦後の枠組み

2025年10月10日に停戦が発効し、ハマスは生存していた168人の人質全員を解放した。一方、イスラエルはパレスチナ人収監者を釈放した。停戦後、トランプ米大統領が提唱した「平和評議会」が設立され、これがガザの「暫定統治機関」として国連安保理決議で承認された。

平和評議会の参加国は年10億ドルを拠出し、任期は2027年12月までで、その後国連が見直すこととなっている。ガザの行政を担う「ガザ統治国家委員会(NCAG)」が設立され、アリ・シャアス氏が委員長に就任したが、イスラエルはガザへの入域を認めていない。ハマスはガザの自前の政府を解散すると発表したが、イスラエルはこれを「見せかけ」と批判した。

計画ではイスラエル軍はガザの約50%まで撤退するはずであったが、現状では約60%を占領している。停戦後もパレスチナ人1,400人以上が死亡している。

武装解除をめぐる対立

2026年7月末、ハマスと他のパレスチナの諸派は武装解除に合意した。この合意はトランプ氏によって「記念碑的な一歩」と評価された。武器の目録作成と保管はNCAGが担い、14日以内に詳細なロードマップを示すことが求められている。

2026年8月に平和評議会は、武装解除の対象を軽火器、重火器、トンネルのすべてと見なし、イスラエル軍の撤退は武装解除の完了後に限るとを表明した。しかし、ハマスはイスラエルが義務を果たさない限り合意を履行しないと主張している。

双方の対立は続いており、イスラエルのネタニヤフ政権は合意文が自国の立場を反映していないとし、スモトリッチ財務相は閣議で再採決を求めている。仲介役にはエジプト、カタール、トルコが加わっている。

指導部と世論の変化

2026年7月20日、ハマスはハリル・ハイヤ氏を新たな政治局長に選出した。この選出はシンワル氏の死去後の空席を埋めるものであり、従来の立場を維持する方向性が示されている。アナリストの見解では、武装解除に抵抗する姿勢が継続すると見られている。

世論調査によると、ハマスの支持率は2026年8月の時点で24%に低下し、西岸では約5分の1、ガザでは約3分の1であった。対照的にファタハも同じく24%の支持を得ている。また、立法評議会選挙の投票先はファタハが32%、ハマスが29%であったが、両者とも指導する資格がないとする意見が44%存在する。

大統領選の候補者としてはマルワン・バルグーティ氏が54%の支持を得ており、次いでハイヤ氏が26%、アッバス氏が14%となっている。アッバス議長の辞任を望む声は79%に達している。また、戦争中のハマスの対応に対する満足度は60%から42%に低下している。

立て直しを阻む壁

ハマスの立て直しにはいくつかの問題点がある。まず、武装解除に関する合意が遅れていることが挙げられる。各派との合意では武装解除を進めることになったが、ハマスはイスラエルの攻撃が続いていることを理由にその履行を拒否している。

次に、支持の低下が影響を及ぼしている。ハマスの支持率は急激に低下し、パレスチナ政策調査では武装闘争が最も有効だと考える人が41%から27%に減少している。戦争でハマスが勝ったとする声も20%にとどまり、逆にイスラエルが勝ったと考える人は15%に過ぎない。

最後に、内部統治や復興の進展が滞っている点が問題である。ガザ内部では反ハマスの武装組織が活動しており、治安維持が難しい状況である。また、国連・EU・世界銀行の評価では、復興に714億ドルが必要とされており、住民の生活は厳しいままである。